最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「それにしてもオルレアンス公爵のご長男は、本当に最悪な人物ですね」
「まあエヴルさん、そんなことを言ってはだめですよ?」
「ですがテーラさん、事実は事実です。あの御仁の本性はもう、ごまかしようもない!」
昔から穏やかで心根の優しいエヴルが、こんな風に悪しざまに人を批判するなんてことは、滅多にないのだけれど……。
私の結婚が決まって以来、どうもエヴルの様子は変だった。
険しい表情で『あの男、いっそ殺したい』とかブツブツ独り言を呟いていたかと思うと、急に悲しそうな顔になってムッツリ黙り込むし。
物言いたげな様子で熱心にこっちを見ているのに、私と視線が合うと慌てて目を逸らすし……。
それでも私に対してはいつも笑顔で接してくれていたのに、婚約式が近づくにつれてその笑顔もどんどん消えてきて、そんな彼の様子が私の心配の種だった。
「テーラさん、ティボー様の評判をお聞きになりましたか?」
「ええ、まあ、小耳には挟みましたけれど」
「なら私の言いたいことは、おわかりでしょう? 最悪な御仁ですよ」
テーラが困った顔をしながら頬に手を当て、気遣わしげな目で私を見た。
……そうなの。実は最悪な男らしいのよ。私がこれから婚約するティボー様って。
世の中、お金持ちのボンボンはろくでもない男が多いって偏見があるけれど、ティボー様はそんな世間の偏見を裏切らない、ストレートにろくでもないタイプらしい。
巷の噂を信じるなら、バカ息子の生きた標本みたいな人だ。
「まあエヴルさん、そんなことを言ってはだめですよ?」
「ですがテーラさん、事実は事実です。あの御仁の本性はもう、ごまかしようもない!」
昔から穏やかで心根の優しいエヴルが、こんな風に悪しざまに人を批判するなんてことは、滅多にないのだけれど……。
私の結婚が決まって以来、どうもエヴルの様子は変だった。
険しい表情で『あの男、いっそ殺したい』とかブツブツ独り言を呟いていたかと思うと、急に悲しそうな顔になってムッツリ黙り込むし。
物言いたげな様子で熱心にこっちを見ているのに、私と視線が合うと慌てて目を逸らすし……。
それでも私に対してはいつも笑顔で接してくれていたのに、婚約式が近づくにつれてその笑顔もどんどん消えてきて、そんな彼の様子が私の心配の種だった。
「テーラさん、ティボー様の評判をお聞きになりましたか?」
「ええ、まあ、小耳には挟みましたけれど」
「なら私の言いたいことは、おわかりでしょう? 最悪な御仁ですよ」
テーラが困った顔をしながら頬に手を当て、気遣わしげな目で私を見た。
……そうなの。実は最悪な男らしいのよ。私がこれから婚約するティボー様って。
世の中、お金持ちのボンボンはろくでもない男が多いって偏見があるけれど、ティボー様はそんな世間の偏見を裏切らない、ストレートにろくでもないタイプらしい。
巷の噂を信じるなら、バカ息子の生きた標本みたいな人だ。