最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 ……いまの言葉はいったい、どういう意味だろう?
 別れの挨拶にしては、やたらポジティブなセリフだけど。

 少々困惑している私の手を両手でギュッと握りしめ、エヴルは興奮しながらしゃべり続けている。

「これからふたりで過ごす、愛と喜びに満ちた日々が目に浮かぶようです!」

「……ふたりで過ごす、愛と喜び?」

「子どもはたくさん欲しいですね! 王子でも姫でも、私はどちらでも構いません。キアラ様が産む子なら、どちらも可愛いに決まっていますから」

「子ども?」

「あ、子どもはまだ早いですか? でもやはり王妃は、迅速な懐妊を望まれるものと思いますが」

「王妃?」

「はい」

「誰が?」

「キアラ様が」

「なんで私が王妃なの?」

「……」

 今度はエヴルが、「?」といった顔つきで小首を傾げた。

「それは、私が王ならば私の妻になるキアラ様は当然、王妃ということになりますが?」
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