最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 エヴルとキスするのが嫌なわけじゃない。
 そんなの、エヴルだってちゃんとわかってるくせに……。

「意地悪しないで……」
「キアラ様の方がよほど意地悪です。私を焦らして楽しんでいらっしゃる」
「そんなこと、してないったら!」
「ならば証しをください。私への愛の証を」

 かすかな甘えの滲んだ、切ない懇願。
 大好きな麗しい人にそんな言葉を囁かれたら、逆らえない。
 しばらくは羞恥心とエヴルへの想いが葛藤していたけれど、私は意を決して、顔を寄せ始めた。

 ふたりの距離が少しずつ近づく毎に、ドキドキが増して顔から火が噴き出そう。
 エヴルと目を合わせられなくて、視線はフラフラ宙を舞う。

 それでもお互いの唇同士が接近していくのがわかって、自分がしていることの恥ずかしさに頭が爆発してしまいそうだった。

 一瞬……一瞬だけでいいよね?
 こんな恥ずかしいこと、それ以上耐えられない……。

「……!」

 そっと唇が触れたか触れないかの、その瞬間、私はエヴルに押し倒されていた。

 驚いて緩んだ唇の隙間からエヴルの舌がするりと入り込んで、噛み付くように激しく私の中を掻き乱す。

 口の中に感じる湿り気と、自分以外の体温と、艶めかしい動きに私の気が遠くなりかけた。
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