最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 エヴルの体重を感じて、胸が苦しい。
 口の中で感じる荒い呼吸と熱さに混乱する。
 突然ぶつけられた生々しい情熱に、どう反応すればいいのかわからない。

「エ、エヴ…… !?」

 ようやく唇が解放されて、ハァッと息を吐きながら彼の名を呼んだ声が、クッと詰まった。

 彼の唇が私の首筋へと移動して、ゆっくり上下に動いている。
 チュッ……とキツく吸われる感触と同時に、頭のてっぺんから腰まで、甘いくすぐったさがジーンと走った。

 疼くような痺れに翻弄され、堪らず私は身を捩って抵抗したけれど、エヴルに難なく封じ込められてしまう。

「ああ……俺のキアラ様……」

 耳をエヴルの柔らかい唇で包まれて、電流が走ったように背中がビクッと反り返った。

 耳に入り込む彼の熱い吐息が、思いもよらないほど私の奥深い部分から、不思議な感覚を掘り起こす。

 勝手に、声が、出そう……。

 唇を思い切り結んで、両目をギュッと閉じて、エヴルのシャツを握りしめながら声が漏れるのを耐えた。

「……!?」

 ところがそうやって懸命に耐える私に、さらにエヴルは耳朶を優しく噛んで追い打ちをかけてくる。

 そっと舌先でくすぐられるたび、背中が痙攣するようにゾクゾク痺れる。
 エヴルの口元を中心にして、甘く強い疼きが体中を支配するように広がり、心を蕩かす。
< 95 / 162 >

この作品をシェア

pagetop