最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
かつて示された、風の道
「お、おはようございますキアラ様」
「お、おはようエヴル」

 翌朝、部屋に挨拶に来たエヴルと私は、昨夜の気恥ずかしさからお互いの顔をまともに見られなかった。

「あの、キアラ様、昨夜は……」

「は、はい!? ゆ、昨夜がどうかした!?」

「あ、いえ! 中庭でイフリート様たちがお待ちのようですので、参りましょう!」

「そ、そうね!」

 顔を赤らめ、モジモジと視線を逸らしながら私たちは部屋を出て、中庭へ向かった。

 中庭へ着くと、すでにイフリート様とノーム様が泉の傍らに立って談笑している。

 生い茂る葉のように豊かだったノーム様の髪は、燃え落ちたせいですっかり短くなってしまっていた。

「おはようございます。イフリート様、ノーム様」

「あ、おはようございます。ゆうべはおさわがせして、ごめんなさい」

「ノーム様、もう大丈夫なんですか? あの、ずいぶん髪がサッパリと……」

「はい。慣れてますから。それに髪なんてすぐに伸びますから、へいきです」

 ……夫に燃やされるのに慣れてる妻っていうのも、すごい。

「精霊の夫婦って、あんなすごい突発事故が日常茶飯事なんですか?」

「いいえ。ふつうは同族どうしがむすばれますから、ああいったことはないですねー」

「我とノームは、本来は組み合わせが悪い。ゆえに周囲からは、ずいぶんと反対された」

 言われてみれば、たしかに相性は悪そうだ。
 だって燃え盛る火に薪をくべたら、勢いに歯止めが効かなくなる。

 だからこそ恋心も燃えあがるのだろうけど、一歩間違えば冗談抜きで、『命がけの恋』になってしまう。

 火災と風の組み合わせも最悪だし、火と水だなんて言うまでもない。
 となればやっぱり、普通は同族の精霊同士が結ばれるべきなんだろう。
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