確かに君は此処に居た
がたっ…がたん

息を殺し、ドアの部に手をかけゆっくりと引いてみる。ドアの位置と対象にある窓は鍵がかけてある。

「…」

部屋に足を踏み入れ、辺りを見渡す。
机の上に飾ってある亡くなった母親の写真に目がいき、思わず目元が和らいだ。長く主が帰っていないこの部屋は綺麗に保たれている。きっと道が小まめに掃除してくれているお陰だ。視線の先の棚は伽夜の身長より大きく四段に分かれてどの棚も本で一杯だ。視線を上向きにすると上から二段目に一冊分の隙間が空いていた。

「なんで…」

そのまま視線を下げれば、床にアルバムが落ちてあった。拾おうと歩み寄る。

ぱた

「!」

突然、アルバムのページが捲り始めた。
それは誰かが何かの写真をじっくりと探すような様子で静寂な部屋に捲る音がゆっくりと響く。

「……」

伽夜は辺りを見渡す。
窓は鍵が掛けられているし、ドアは固く閉ざされている。部屋の中にはアルバムのページを捲る要因はない。たださえ、アルバムのページは1ページ1ページが厚い。それを捲るには突風若しくは人の手のみ。伽夜はただそれを凝視するのみだった。
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