確かに君は此処に居た
4.君は非科学少年
「……?」

寒い。そんな感覚が伽夜を起こした。霞む視界をはっきりさせようと目を擦る。

「やあ、大丈夫?」
「っつ!?」

飛び込んできたのは目の前に少年の顔。伽夜は起き上がった。

「おはよ。んーでも今はまだ夜明け前だから、こんばんは、かな」

伽夜は壁に掛けられた時計に視線を向けた。5時47分。
膝を抱えるようにして座っている少年は、じっと見つめる伽夜を首を少し傾げて見ている。
未明の部屋で見知らぬ少年と二人きり。

「や…っ、来ないで!出ってて!」

起きたばかりのぼやけた脳は覚醒し、やっと冷静な判断をもたらした。

「伽夜っ、騒いだら近所迷惑!」

騒ぎ出した伽夜を少年は宥めようと手を伸ばす。何せ此処はマンションだ。壁は薄くないものの隣人に迷惑がかかるかもしれない。

「嫌!来ないでよ、不審者!…!」

その瞬間、伽夜の目が大きく見開ける。

「……やっぱり…」

少年はしばらく自分の掌を見ていたが、そのまま手を下ろし悲しそうに目を伏せた。

「…君は…」

見てしまった。

少年が伽夜を掴もうとした手が伽夜を通り過ぎるのを。

「うん。僕、幽霊なんだ」

そう言って少年は顔を上げて笑った。

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