確かに君は此処に居た
「頼みを聞いて欲しくてね、無理やり出てきたんだ」
「無理やり?」
「伽夜の波長をちょっといじって僕の波長と合わせてみた」

簡単に言うと、少年の姿を伽夜が認識出来るようになったということだ。

「伽夜は霊感あまりないから無理やり…。ごめんね、頭痛かったよね?」

話からすると、さっきの頭の痛みはこれが原因だったらしい。

「ううん、今は平気②だけど…」

痛みはない。むしろ朝特有の眠気の方が勝る。

「で、頼みって何?」
「指輪を探して欲しいんだ」
「指輪を?」

指輪とは、あの婚約指輪だろう。少年の指を見れば、あの時あったはずが今はない。

「どうやら落としたんだ」
「落とした!?」
「あの時はあったけど、学校に興味があって入って見学してたら…気付いたらなくてさ。必死に探してたら倒れちゃた」
「なるほど。指輪がないと成仏が出来ないってわけね」

だから、わざわざ伽夜の前に現れたらしい。少年は柔らかく微笑んでいた。

「そんなに指輪が大事なの?」
「大事だよ!この世で2番目に大事なモノ」

ならば、1番大事なモノは?と問いたいが敢えて黙っておくことにした。

「…それを探して欲しいんだ。僕は実体じゃないから…」

透ける身体では物は掴めない。

「どうして私に?だって霊感ある子に見つけてもらった方が…」
「人選は伽夜しかいないよ。やっぱり迷惑かな?」

少年は端正な顔を歪ませた。伽夜は慌てて首を振る。

「迷惑じゃないよ。でも取引はフェアじゃないとね」
「伽夜ってば、案外ギブアンドテイク主義?」
「そうじゃないの。けれど…もし見つかったら私の頼み聞いてくれる?」
「それは何?」
「その時にならないと教えない」

腕組みをして、唸っている少年はしばらく考え込んでいた。

「僕に出来ること?」

もちろんと相槌を打つ。少年に出来ることだからこそ、伽夜は願っているのだ。

「Ok.I see」

綺麗で流暢な発音だ。

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