確かに君は此処に居た
6.役者は揃い、動き出す
夕方前の公園は子供たちが遊んでいる。そこから少し離れたベンチで二人は並んで座っている。

「ごめんね、明くん」
「え?何がだい」
「学校に行けなくなって…」

伽夜は申し訳なさで目を伏せる。自分の不注意のせいで学校に行けず、探し物は探せない。探し物はなくした事に気付いた時から早めに探す方が見つかる可能性が高いというのに。

「大事なモノなんだもの。明日は絶対、探しに行くから」
「気にしなくていいよ!むしろ伽夜の方こそごめん。それに…助けられなくてごめんね」

あの時、咄嗟に明は伽夜へと手を伸ばした。けれど、霊体である明の手は伽夜をすり抜けてしまった。

(…分かってたはずなのに。…でも、怪我をさせたくなかったんだ)

自責の思いが積もる。けれど、明はそれを振りきるように顔を振った。

「傷、痛い?」
「水で洗うときは結構しみたけど、そんなに痛くない」

足の膝頭。派手に擦りむいた傷口は公園の水道水で洗ったおかげで砂やごみは取れ、血が固まり始めている。

「傷跡が残らないといいんだけれど」
「大丈夫。一応まだ若いから」

多分、まめに治療すれば残らないだろう。

「あ」

明が声を上げた。伽夜はそれにつられ顔を上げる。

「…遅くなった」

目の前に大久保が立っていた。走って来たらしく、息が弾んでいる。大久保は伽夜と視線が合うとふいと逸らし、伽夜に白い箱を差し出した。

「?」

突然差し出された箱を受けとる。
白い箱の蓋には十字。
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