確かに君は此処に居た
洗面所の蛇口を捻ると冷たい水が一気に出てきた。
早く洗わないと手が冷えると思いつつ、ふと顔を上げる。

「………」

鏡の自分と目が合う。
風が強かったせいか髪がボサボサだ。

「…やっぱり…」

自分の隣に居る明の姿は映っていない。
伽夜は隣を見上げた。

「どうしたの?」

ふわふわと宙に浮く明は確かに居る。

(…やっぱり、幽霊なんだな…)

改めて、そう実感する。

「なんでもないよ?」

現実と非現実の狭間の感覚に囚われないように、伽夜は明に笑ってみせた。



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