確かに君は此処に居た
カレーは美味しい。
久しぶりだから、なおさら美味しい。充特製ドレッシングのかかったサラダも、食後のデザートもあるから完璧だ。

(……でもね…)

伽夜は中々、食が進まなかった。

「まあ、食欲ないんですの?」

リビングで洗濯物を畳み終わった充が伽夜の顔を覗き込む。充は注がれた食器を悲しそうに目を落とし、伽夜はスプーンを掴んだまま、固まる。

「い、いえ!」
「やはり病院に…」
「大丈夫、平気ですっ」
「…それとも、カレーの煮方があまかったかしら」
「それも違います。ただ…」
「ただ?」

(…明くんが食べれないのが…なんか嫌だな)

伽夜と向かい側に座る明は、視線が合うなり「何?」と首を傾げる。

「伽夜さん?」
「!…あ、えーしゅ、宿題が…」
「宿題?学校の、ですか?」
「そうです、宿題です!先生が意地悪して難しい宿題を出されて悩んでいたんですよ」
「伽夜さんがそんなに悩むなんて、よほど難しいのですわね」
「はい、難しいんです」

咄嗟に言い繕った嘘は中々、上手くつけたようだ。

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