確かに君は此処に居た
「真面目さは伽夜さんの良い気性だと思いますけれど、食事は体のためにちゃんと摂って下さいね」
「充さんが作ってくれたモノを残したりしませんよ」
「まあ、そんな事を言って頂けるなんて作り甲斐がありますわ」

くすくすと上品に笑いながら、充はリビングから出ていった。

「食欲ないの?」
「違うよ。ただね、明くんが食べられないのが残念だなーって」

伽夜の言葉を聞くなり、明は悲しそうに顔を歪めた。

「ごめんね、僕は幽霊だから。触れないし、食べられない」
「ううん、いいの。だって私の我が儘だから」
「美味しい?」
「もちろんv…あ」
「ん?」

何かを思い付いたらしい伽夜は、それがとても良かったらしく見る見る目を輝かせた。

「ねえねえ、御供えは?」
「御供えって…御供え?」
「そうっ!明くんに御供えすればいいよね。ほら、亡くなった人に御供えするのと同じだもの」
「………」

伽夜の「明に御供えを」案に対し、本人である明は無言のまま複雑そうに伽夜を見ている。

「あのさ…伽夜…」
「いい考え!えーと、お酒と米と…」

早速、行動に出た伽夜はキッチンへと向かった。

「………僕、クリスチャンなんだけどなー」

と呟く明の声は届くことがなかった。
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