確かに君は此処に居た
(しまった…まだ白紙)

右手に握っているシャーペンはまだ役割を果たしていない。伽夜は今まで話したことを綴りだした。

「…とりあえず、その後に倒れたって感じかな?」
「うん。帰ろーとしたら発作が起きて倒れたみたいだね」
「なるほど。じゃあ、最初は校内からが妥当みたいね。その前に職員室前に行くか…」

職員室前にはショーケースがある。その中に校内で拾われた忘れモノ、落としモノが持ち主を待っている。ひょっとしたら、そこにあるかもしれない。

「明日、日曜だけど行くの?」
「もちろん!休日の方が探しやすいし、早く見つけないとね」
「了解。明日は学校行き決定!…あ、そろそろお風呂入って来たら?もう9時前だ」
「本当!なら、入ってくる」

伽夜はシャーペンを置くと、立ち上がりドアを引いた。

「多分、明くんはしないと思うけど……覗かないでね」

思い出したように振り返って言う伽夜に、明はにやりと笑みを浮かべる。

「えー絶対、駄目?」
「だ…っ、駄目!絶対駄目!」
「そう言われると余計覗きたくなるのが、男の性だなあ」
「明くん!」
「寂しいなら、喜んで一緒に入るよ?残念ながら、僕の裸は見せられないけどさ。お風呂の中で話相手にでも」
「入らなくていいし、話さなくていいし、見なくていいよっ!」

バタンっ

乱暴に閉まるドア。ぱたぱたと慌ただしく浴場へ向かう足音が聞こえる。

「からかいすぎたかな~☆」

からからと笑う明。言葉に反して反省の色は見えない。

「さてっと、僕もやることをやるか…」

窓の向こうを見て、明は身を翻す。そのまま窓の向こうの闇に紛れ、姿を消した。

< 28 / 34 >

この作品をシェア

pagetop