確かに君は此処に居た
10.大切なモノは何処に?
「…ぃ…よ…」
遠くで呼び声がする。
けれど、朝独特の気だるさと心地好い感覚からなかなか抜け出せない。
「…起き…夜」
その声はだんだんと大きくなる。
「伽夜っ!」
「…?…はあい…」
耳元で弾けた声に伽夜は一気に夢の世界から現実へ引き戻された。
「やあ、おはよ。今日もいい天気だよ」
覗き込む顔。
(…睫毛長い)
前髪の向こうの
茶色がかった目は至近距離。
(…ん?)
唖然として数回瞬きをする。
「…―っ!?う、わっ!」
「伽夜!?」
驚いた拍子に身体はベッドからフローリングの床に落ちる。
「痛…」
「だ、大丈夫?」
どうやら背中から落ちたらしい。
痛む背中を擦りながら、伽夜は宙に浮いた明を見上げる。
「大丈夫。…おはよう」
「うん、おはよう」
「今…何時?」
「今?えーと、7時半だよ」
「7時半!?」
起き上がった伽夜の表情が驚いていて、明はたちまち失態をおかしたかのような表情を浮かべた。