確かに君は此処に居た
噂は皆好きらしい。教室に行くと、皆、その噂を口にして語っていた。その皆とは多くが女子でグループごとに固まって華を咲かせているようだった。

「ねえ、知ってる?」
「知ってるけれど」

予習をどうにかしようとしていた伽夜にクラスメイトがそう言って来たのをすんなり頷いた。噂好きの女子たちは好奇心を糧に決まり文句を口にして話し出す。

「なんだあ…古嶋さんなら知っていないと思ったのに」

残念そうに口を尖らせるのはこの子の癖なのだろうか。

「じゃあ、これ知ってる?」
「?」

一瞬でも疑問を含んだ表情をしたのが悪かった。クラスメイトはその反応に嬉しそうに声を弾ませた。

「倒れた美少年、亡くなったらしいよ」
「!」
「運ばれた病院でそのまま亡くなったみたい。ふふ、驚いた?」

満足げに微笑む。

「その子ってどんな格好していたの?」
「それは知らないけど、田口さんが見たって言ってた。聞いて来ようか」
「いや…いいよ。自分で聞く」
「ううん、聞いてきてあげる。待ってて」

そう言ってクラスメイトは田口さんの所に向かって行った。

「古島さん!」

弾ませた声に顔を上げると、クラスメイトと田口さんが立っていた。

「どんな格好していた?だっけ?」

伽夜は深く頷く。

「白TにGパンで黒いパーカーの茶髪頭だった。近くに野球帽も落ちてたからあの子のかもね」
「っ!!」

伽夜は驚きで目を見開いた。証言と昨日の少年の格好がぴったり重なり合っていた。

「救急車に乗った先生の名前とか分かる?」
「もちろん♪」

クラスメイトがにやりと笑った。

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