確かに君は此処に居た

 空き教室に入って、スカートのポケットから携帯を出す。薄く軽いを売りとして開発されたその携帯はそれよりも機能性を比較的重宝していた。

「もしもし?」
『…なんだ』
「今、大学昼休みでしょう?1つ聞きたいの」
『忙しいんだ。早くしてくれ』
「私の指輪って何処かで買ったものなの?」
『……』
「ねえ、父さん」
『…あれは……店で買ったものではない。オーダーして作らせた婚約指輪だ』
「オーダー?婚約指輪?何処で?」
『もう良いだろう。切るぞ』
「待って!あきらって人、知ってる?」
『思い出したのか!?』
「…何を?」
『なら、いい。じゃあな』

一方的に切られた電話。
婚約指輪。
何かを思い出したのか、という問い。
告げられた事実に戸惑いが隠せない。

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