秘密 ~生徒に恋して~


話が逸れた…

その柴田くんが、眉毛を下げて心配そうに私を見下ろしていたのだ。

「…あ…うん…多分、大丈夫」

ゆっくり目を開けたものの、頭がクラクラして動けない。


「おいっ!救急車呼べよ!」

誰かが興奮気味に叫んでいる。


「いや~…ボールがぶつかったぐらいでそれはマズイだろ」

どこかで悠也の声が聞こえた。


私も救急車は勘弁だけど…
そんなに心配してくれてないのかな…
そう思うと余計に頭がズキズキと痛んで来て、私は目を閉じた。


「保健の先生、呼んで来いよ」

そんな声が聞こえ、思わずツッコミを入れたくなった私の代わりに、また悠也の声がした。

「バカ、この時間は、いつも葉月先生だろ?」

さすがにいつも冷静な悠也だ。
いや、違う…単に他の連中がヌケ過ぎてるだけだ。


「水!」「保冷剤!」「タオルも?!」

などと、わらわらと慌てまくって騒ぐ声に囲まれ、私はただ脱力状態で目を閉じていた。

< 10 / 111 >

この作品をシェア

pagetop