秘密 ~生徒に恋して~
すると突然、私の身体が宙に浮いた。
「えっ?、…えっ?!」
驚いて目を開け、事態を確かめようとすると、私の目の前には悠也の顔。
何と悠也が私を横抱きにして、急ぎ足で歩き出していたのだ。
「ちょ、ちょっと片瀬君!大丈夫!私、歩けるから下ろして!」
「いいから、ジッとしてろ!」
思わずジタバタと彼の腕から逃れようとした私だったが、真剣な顔で一喝されてしまった。
なぜ悠也が…
私を運んでくれるなら、もっとガタイの良い部員がいくらでもいる筈なのに、よりによって部員の中では一番華奢かと思われる体格の悠也が…。
悠也は、身長はそこそこだが、どちらかと言うと細身の体型なのだ。
「俺が替わるよ」
案の定、部の中で一番大柄で力もありそうな新谷が走って来て、悠也に声をかけた。
「大丈夫だ。それより多分花壇の中に先生の眼鏡が落ちてる筈だから、それ探して持って来てくれ」
やはり、冷静に回りを見ている悠也。
でも、そんなことはどうでも良くて…
確かに私は小柄ではあるけれど、大人を一人抱えて、広いグラウンドの端から端までを歩くのは大変なことだと思う。
自分の気持ちとしては嬉しいけど、大柄な新谷に交替して貰った方が、安心と言うか、申し訳なさも半減するのに…と、痛む頭で何となく考えた。