秘密 ~生徒に恋して~
悠也の指が、私の前髪をよけて額をそっと触る。
まだ痛みは続いていたが、悠也の手が温かくて一瞬痛みが引いたような気がした。
「あぁ…腫れて来ちゃったな…」
保冷剤を挟んだ濡れタオルを私の額に乗せ、その上から手を添えてくれた。
悠也の腕が目の前にあることで、私の頭は余計に熱っぽさを覚えていた。決しておでこが腫れているせいだけではないと思った。
「おい、眼鏡あったけどさ、フレーム壊れちゃってるぞ」
新谷が入って来て、私の眼鏡を悠也に手渡す。
照れ屋で口下手、硬派の新谷は、私に大丈夫か?と直接聞いたりはしない。
表情だけでそれを表すと、保健室を出て行った。
「あっちゃー!こりゃヒデェな。もう使えねえぞ。先生、車だっけ?今日、帰るの困んな」
「ううん、私バスだから。それにその眼鏡、実は度 入ってないの。だから平気よ」
「え?これダテなのかよ!じゃ何でいつもかけてんの?」
「何か私、派手に見えるらしくて…。教師らしくないってよく言われるからそれで…」
「それで眼鏡?安易な発想だな~」
悠也が呆れたように言う。
「でもさ…」
今度は私の顔をマジマジと覗き込む。
「先生、まぁまぁ綺麗なんだからさ、眼鏡なんかない方がいいんじゃね?」
「やだ、大人をからかわないでよ~」
そう笑い飛ばしたものの、私の顔はきっと引きつっていただろう…。
…そんな澄んだ目で、顔近づけて、そんなこと言わないでよ…