秘密 ~生徒に恋して~
部員達と別れ、私は取り敢えず周りの目を気にしながら悠也の自転車の後ろに乗った。
「ちゃんと掴まれよ。横乗りなんだし、またひっくり返って頭打ったら、俺、責任取れねえし」
私がためらいながらも悠也の腰に手を回すと、悠也はゆっくりペダルを踏み始めた。
昼間は暑かったけど、夜の風は結構心地よい。
夏の風を切って、自転車は軽快に走る。
決して不快ではない悠也の汗の匂いと、髪の甘く男っぽい匂いに、私は酔いしれていた。
私の額に当たったボールは、柴田のキャッチャーミットに一度当たった後に逸れて、飛んで行ったのだそうだ。
もしそのワンクッションがないまま直撃していたら、もっと大変なことになっていただろうから、本当に良かったと、悠也は話した。
もっとも、逆にそれがなければ、別の場所に落ちていたのかも知れないから、良かったのかどうかも疑問だけど…と、とにかく何度も謝ってくれた。