秘密 ~生徒に恋して~
ちょうどいい機会だったのかも知れない。
私は、大学時代の先輩で恋人である彼から、プロポーズをされていた。
悠也のことは、絶対にどうにもならない。
自分のそんな気持ちに蓋をする為に彼のプロポーズを受けるのが、狡いことなのは重々承知していた。
それでも、何とかなりそうな気がしていた。
悠也を好きになる前は、彼のことを真剣に愛していたし、自分でも将来は彼との結婚を望んでいたのだ。
悠也への想いは、きっと一時的なもの…
そう自分に言い聞かせながら、その気持ちを隠して彼と付き合って来た。
彼には申し訳ないと思っている。
こんな状態なら、いっそ別れを切り出した方がいいと何度も思ったが、それでもできなかった。
私は狡い女だ。
悠也はあと数ヶ月で卒業して行く。
きっと会わなくなれば、忘れられる。
長い夢を見てそれが覚めた時のように、いつか忘れて行けると思った。
それでも、私の心の迷いはなかなか消えてくれなかった。