秘密 ~生徒に恋して~
「何だよ。またバス来ねぇのか~?」
通りを挟んで大きな声で話し掛けて来るので、バス待ちの人達が、誰に話し掛けているのかキョロキョロと見回す。
私は声を出さずに大きく頷いてみせた。
「また、乗ってくか?」
悠也は自転車の後ろを指差す。
私はまた無言で大きく手と首を横に振った。
「いいじゃん、別に気にする仲じゃなし」
(そんな大声で!そもそもどんな仲よ!)
声には出さずツッコミを入れてみたものの、バス待ちの人達が数人、相手を突き止めたとばかりに私の顔を見ているのに気づいた。
私は恥ずかしくなり、そそくさと列を抜けると横断歩道を渡って悠也の所へ行った。
「もう~大声で。恥ずかしいなぁ」
「いいじゃん、別に。それより早く乗れよ」
悠也は全く気に留める素振りもなく、自転車の荷台を叩く。
通りの向こうからバス待ちの人達がこっちを見ているような気がして、私は悠也の背中を押して自転車の隣を並んで歩き、その視線から逃れた。
「もう誰も見てねぇだろ。乗れば?」
少し歩いたところで悠也に促され、私はあの日のように自転車の後ろに横乗りした。