秘密 ~生徒に恋して~
「じゃあな」
「うん、またね」
悠也が自転車に乗り、ゆっくりと走り出す。
私は無理に笑顔を作り手を振ると、少し俯いた後ろ姿をただ見ている。
一年前の夏の日と同じ光景…。
でも、今日、二人の恋は終わった。
何も始まらず、何も実らないまま、終わってしまった。
この場所に着いた頃には眩しく煌めいていた月は、雲を被り、幻想的な姿になっていた。
おぼろ月は、私達の秘め事を、見ない振りしてくれていたのだろうか。