秘密 ~生徒に恋して~
悠也の後ろ姿が、だんだん遠ざかって行く。
俯きながら自転車を漕いでいた悠也が、ゆっくりと空を仰いだ。
彼もまた、おぼろ月を見ているのだろうか…
でも、見上げているのは月が出ている方向ではなかった。
そして悠也の右腕が、何度となく顔を撫でる仕草をした。
突然、鼻の奥がツーンとして、涙が押し寄せそうになり、私はもう彼の後ろ姿を見ていることができなくなった。
堤防の階段を、私は急ぎ足で駆け降りる。
私はその場にしゃがみ込み、声を上げて泣いた。
誰もいない堤防の下、ただ、おぼろ月だけが、優しく私を見下ろしていた。