秘密 ~生徒に恋して~
そして月日は流れ、現在、悠也は三年生。
野球部員は、夏の大会を最後に引退した。
夢中で打ち込めるものをやっと見つけたのに、それを突然失い、彼らは暫く虚脱状態だったが、徐々に現実を見つめるようになって行った。
学年全体が受験モードになっているこの時期になっても、彼は、進学するのか就職するのか、全く情報が伝わって来ない。
直接、本人に聞いても
「大丈夫だから」
と、まるで返事になっていなかった。
もっとも、悠也と言葉を交わしたのは、10月半ば、彼と一緒に帰った〝あの日〟が最後…
その日を境に、私は彼を避けるように行動していた…。
胸の痛みを、ただ隠すようにして…。
悠也はきっと何も知らない。
気付かせてはいけない…
私自身がそう望んだのだから…。
そして、あと三ヶ月足らずで、卒業の時期は来る。
それが、
本当の悲しい別れの日になるのか、
胸の痛みから解放される日になるのか、
その日を迎える事を、
望んでいるのか、
そうでないのか、
自分の感情さえもわからず、ただ私は気持ちを持て余していた。