秘密 ~生徒に恋して~
私の中の淀んだ空気を破るように、ドアをノックする音がした。
振り返ると、元野球部の新谷が、ドアを少し開けて隙間から顔を覗かせた。
途端に懐かしい気持ちでいっぱいになる。
「あら~新谷くん。久しぶりね~!今日はどうし…た…」
そこまで言って、私は息を飲んだ。
ガラッと開けたドアの向こうに、新谷の右肩に担がれた悠也の姿がそこにあった。
「先生、こいつ、熱あるみたいなんだよね。
授業中ずーっと寝てて、いつものことだと思ってたんだけど、終わっても全然起きなくてさ。触ってみたらすげぇ熱いんだよ。
親に迎え来て貰うかって聞いたんだけど、こいつの母親、看護師で今日は夜勤らしくて…」
悠也は、新谷にもたれかかったまま、ぐったりした感じで荒い呼吸をしている。
私も悠也の腕を支え、新谷と二人でベッドの端に座らせる。
「じゃ、ここで暫く預かって、親御さんと何とか連絡取ってみるわね」
「うん。じゃ、頼むよ」
「はい。…あ~、汗かいてるから上着脱がせなきゃね。 新谷くん、ちょっと手伝っ…て…」
そう言いながら振り返ってみたが、新谷は私の言葉を全く聞いてなかったようで、ドアを閉めて行ってしまった。