秘密 ~生徒に恋して~
それから、何度か汗を拭ったり、タオルを冷水で絞り、悠也の額に乗せ直すことを繰り返した。
二時間近くが過ぎ、熱を計ってみると、ここへ来た時よりも随分下がったようだった。
母親の携帯には、相変わらず何度電話をしても繋がらない。
看護師だと言っていたから、勤務に入っていれば携帯をチェックすることなどできないのだろう。
担任は、これから会議で他校へ行かねばならないと言うので、後は引き受けます、と言ってしまった。
7時半が過ぎ、教頭が保健室に現れた。
「親御さんにはまだ連絡取れないの?
困ったわねぇ~私も今から教頭会に行かなきゃならないんだけど」
もう職員室には誰も残っていないと言う。
「再度、保護者に連絡取ってみます。携帯には出られないようなので、勤務先の病院に連絡だけして、タクシー呼んで自宅に送り届けます。
熱もだいぶ引きましたし、小さい子どもじゃないんで、母親が不在でも大丈夫だと思うんですけど」
「そうね。じゃ悪いけど頼んだわよ。戸締まりもよろしくね」
そう言って教頭は保健室を出て行った。