秘密 ~生徒に恋して~
「片瀬くん…片瀬くん」
悠也が寝ているベッドの近くに行き、声を掛けてみたが、起きる気配はない。
「爆睡してる…」
悠也の顔からは苦し気な表情が抜けて、荒かった呼吸も随分穏やかになり、寝息を立てていた。
無防備な寝顔に、私の口元が緩んでしまう。
悠也の額に、そっと手を置いてみる。
もう平熱くらいまで下がっていると確信して、私はやっと安堵した。
「葉月…先…生…?」
室内と身の回りを片付け、戸締まりをしていつでも帰れるよう支度をしている私の背後で悠也の声がして、私は側へ歩み寄った。
「あ、目が覚めた?どう?気分は」
「あれ…?…今、何時?」
私は腕時計を確認する。
「8時15分…かな」
「え~っ?!もう夜じゃん!先生、こんな時間まで何やってんの?」
「何…やってんのって…」
熱で朦朧としてたから、何もわかってなかったのも無理はない。