秘密 ~生徒に恋して~
堤防から降りる階段の下まで、悠也は送ってくれた。
あの秋の日、私が悠也を思って泣いた場所で、悠也は私をギュッと抱きしめてキスしてくれた。
あの日の悲しい想い出が、完全に拭い去られたような気がした。
「葉月先生、大好きだよ。おやすみ」
恥ずかしそうに、でもとびきりの笑顔でそう言って、悠也は去って行った。
何度も振り返り、手を振りながら…。
悠也の姿が見えなくなると、途端に冬の風が冷たく感じられて、私は自分の両腕を抱いた。
ふと、悠也のカッターシャツから彼の匂いがして、今、別れたばかりなのに、もう会いたいと思ってしまった。
冷たく澄んだ空には金星が煌めいていて、こんな私を見ているのかと思ったら急に照れくさくなり、私は急ぎ足で自分の部屋のドアへと向かった。