秘密 ～生徒に恋して～

矢野が大きく息をすると、その左腕から、鋭い一球が放たれた。
次の瞬間、悠也の握ったバットがそれに呼応するようにボールを捉えた。


そして、快音を立てて舞い上がった白球が、高い空にぐんぐん吸い込まれて行くのを私達は見上げている。

外野手がボールの行方を追い掛けて走るが、それは彼の頭上を遥かに越えて落ちた。


「クッソ！」

矢野が地面を蹴って悔しがっている。


ベースを蹴って走る悠也の姿に、一瞬、以前のユニフォーム姿が重なり、私の胸を震わせた。

悠也は、空を見上げて満面の笑みでダイヤモンドを一周すると、両手を上げてホームベースを踏んだ。