秘密 ~生徒に恋して~


「おいっ!片瀬。戻って来い!もう一回勝負だ!」

後輩から学ランを受け取り、ベンチを後にしようとする悠也を、矢野が大声で呼び止める。


「矢野くん、もうやめようよ。一、二年が一生懸命朝練してるのに、あんまり邪魔しちゃ悪いよ」

「そうそう!もう引き上げっぞ。じゃあな、邪魔したな」

悠也は後輩数人と片手でハイタッチすると、歩き出す。


「テッメー!一番美味しいとこ持って行きやがって。こっちは今日一日悶々とするっつーの」

「わかった、わかった。また今度勝負してやるから、今日は大人しく負けを認めろ」


言い合いをしながらベンチを後にする二人の後ろを、柴田くんがオロオロした様子でついて来る。
こんな感じも、全く変わってない。  



「お前ら!今度は片瀬みたいに、俺の球 打てるように、ちゃんと修行しとけよー!」

「はい!ありがとうございましたー!」

気持ちが治まらない腹いせなのか、矢野が後輩の野球部員を振り返り、叫ぶ。


文句ばかり言っていても、何気に仲間を認めてしまっているところが、何だか笑えてしまうのだ。
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