乙女は白馬に乗った王子を待っている
現実はいつだってドラマみたいにうまくはいかなかい
「地味OLがオフィスでいきなりイケメン専務に『オレと付き合え』とか言われるかっつーの!
専務の部屋に無理やり引き込まれてキスって……、
これ、ぶっちゃけセクハラじゃねーの?」
ゆり子はカラムーチョをボリボリ食べながらテレビを前に怒っていた。
「怒りながら食べると太るよー、ゆりちゃん。」
こちらはおっとりした声で苺ポッキーをかじっている。テレビでイケメン専務が地味OLにキスをしたところで目を見開いた。
「見た!? 今の壁ドン!
完璧なシチュエーション、完璧な横顔、完璧なキス!! ああ〜〜、憧れる〜。」
わかった、わかったからつばを飛ばすな、さやかよ。
「そりゃ、ドラマだからね……。」
ゆり子は空になったカラムーチョの袋を逆さまにした。最後の最後までしっかり食べようという魂胆だ。
ゆり子は、夢見る顔でドラマを食い入るように見つめるさやかを冷ややかに横目でみながら、冷蔵庫のビールを取りに立ち上がった。
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