乙女は白馬に乗った王子を待っている
生きがいって何なんだ?
「何か、思わずさやかを殴りそうになっちゃいました。社長の彼女のことをこんな風に言うのもアレですけど。」
月曜日、高橋の顔をみるなり、なんか胸につかえていたものを吐き出したくて、朝から気分の悪くなる話を滔々としているゆり子である。
それでも、高橋はあまり気にする事もなく、いつものように朗らかに返事をした。
「だから、権藤と東城は合うと思う、ってオレ、いったじゃない。結構いいヤツだろ。」
確かに、最初の時よりもずっと付き合いやすい良い人だったというのは認めない訳にはいかない。
「っていうか、東城さん、合コンのときにもああいう格好してくれば、好感度、かなり違うと思いますよ。」
「いやー、あれ、わざとなんだよ。」
「どういうことですか?」
「ここだけの話なんだけどね、アイツさあ、合コンで付き合った女に何回か騙されて、もめたことがあってさー。
なんかねー、そういう女って、どうも小金の匂いを敏感に嗅ぎ分けるんだよなー。
東城も人がいいから、結構、甘い顔しちゃったりしてさ、それで、必要以上にダサめの男を演出するんだよ。羽振りよくしてるって言わないでくれって東城からも口止めされてるし。」
ああ……、それで最初は、つぶれそうな会社とか言ってたのか。
ゆり子は高橋の言葉を思い出して納得した。
「じゃ、東城さんの方がさやかより一枚も二枚も上手ってことですか。」
「アイツなりの保身だよ。東城は曲がりなりにも社長で、しかも、アイツは結構儲けてるし。
玉の輿なら、オレよりアイツの方がだいぶ大きな御輿に乗れるぜ。」
「社長の御輿なんて、今にもぽきんと脚が折れそうじゃないですか。」
「おー、言うてくれるじゃないの。」
「なーんか、さやかには羽振り良いみたいですけど、私のお給料もちゃんと確保して下さいね。」