乙女は白馬に乗った王子を待っている

「そりゃあ、ブラック企業のイメージに引きずられすぎてるんじゃない?」

高橋は、ゆり子の話を聞くと笑いながら応えて、続けた。

「だってさ、従業員ががんばって力を出してくれたら、会社の生産性は絶対あがるわけだしさ、その方がいいじゃない。」

「ですよねー?? 私も、セミナーに行ってみて、派遣に来る方が、充実して働けるようにお手伝いしたいな、って改めて思いました。」

「おー、それは行った甲斐があったじゃないか。じゃあ、これからもよろしく頼みます。」

「はい!頑張ります。」

ゆり子は、その日、セミナーの後、社に戻って来て、研修プログラムを練り直したのだ。もっと効率よくできないか……、面白くてためになる、と思って参加してもらうにはどうしたらいいのか……、自分なりにもっと工夫していいものにしたいと思っていた。

「権藤、頑張るのは結構だが、力んだところで、いい結果になるとは限らないからな。」

「水を差さないで下さいよ、社長。」

「また、そういうひねた受け取り方……、ま、いいか。好きなように頑張ってくれ。」

「はい!」ゆり子は再び明るい声で返事をした。

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