乙女は白馬に乗った王子を待っている

それから、ゆり子は研修の事で頭がいっぱいだった。

自分も、派遣社員としてあちこちの会社を転々とした経験があるだけに、やっぱり、これから派遣で働きたいと思ってる人たちが、希望を持てるような働き方を見つけてくれたら、と思うのだ。

「……って甘いんでしょうかね? 私は。」

ゆり子は、ビールの入ったグラスをどんと叩いて気炎を上げた。

高橋は嬉しそうにゆり子のご高説を賜っている。ニヤニヤしながら、「いいと思うよ」と上から目線で言うものだから、何だか居心地が悪かった。

ゆり子は、今週の研修は今までよりうまくいったような手応えを感じていた。
ただ、自分でそう思っただけかもしれないが、それでも、少しは役にたてたかもしれない、と思うと、不思議な充実感を感じていた。

「お疲れさま。ホント頑張ったよね、権藤。」

カウンターに座った高橋はそう言って、祝杯をあげながら、ゆり子ににこっと笑いかけた。


どきん。


思いがけない笑顔に心臓が高鳴る。

「あ、ありがとうございます。」

少しどもってむせてしまった。

「どうしたの? 大丈夫?」

高橋は笑いながらゆり子の背中をさすってくれた。



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