乙女は白馬に乗った王子を待っている
金曜日の朝ゆり子が目を覚ましたとき、珍しくさやかが早く起きてコーヒーを淹れてくれていた。
「どうしたの? 珍しいじゃない、こんなに早く起きるなんて。」
「……だって、寝てないもん。」
よくよく見ると、確かにさやかの顔は少しむくれて、目も血走っているように見えた。
「ほんとだ。すごい顔になってるよー。徹夜なんてね、肌にも悪いし、もう年なんだからしない方がいいよ。」
「だってぇ〜。」
さやかはぐじぐじと泣き出した。……確かに、さやかがドラマにハマるのも分かるような気がする。
その泣き方(あくまで泣き方だけだが)は、ドラマの有森美香を彷彿とさせるような泣き方で、一目で高橋が原因だ、ということがわかった。
「もうね、三日間も連絡がなかったの。しかも、明日は土曜日なんだよ……。どうして連絡くれないんだろう。」
「え、三日間……って、いや、忙しかったんじゃないの、社長も。」
夕べ、社長と一杯飲みにいったことは黙ってた方がいいだろう……。
アレは、社員(一人しかいないけど)の慰労会ってことで、高橋にとっては、仕事の一環なわけだし。