乙女は白馬に乗った王子を待っている

……しかし、相変わらず面倒くさい女だ。
この前は、行きたいデートスポットのリストを送ってくるかと思ったら、今度は連絡がこない、と言って落ち込む。

しかも連絡を待って徹夜。

最も、こういうのめり込むところが男にとっては可愛いく思えるのかもしれなかった。
現に高橋も、いじらしい、と言って目尻をさげていたではないか。

その時の高橋のまんざらでもない顔を思い出して、ゆり子の顔は無意識のうちに憮然とした表情に変わっていた。

ホント、男ってのは、ああいう女の策略がわかんないのかね?


……という顔をしていたに違いない。
ゆり子がドアを開けて職場に入っていった時、高橋は、何か悪いことした?と聞いて来た。

ゆり子は慌てる。

「いえ……、何でもありません。」

答えつつ、ふと思いついて、さやかのことを口にした。

「社長から連絡がない、ってさやかが落ち込んでましたよ〜。」

「ああ……、そういえば、バタバタしてたから忘れてた。」

「明日はデートないのか、って気をもんでましたから、連絡してあげて下さいよ。」

「そうかー、明日はもう土曜日か。早いなー。」

「ところで社長。」

「うん?」

「あの、お給料日っていつなんですか?」

「給料日?25日締めの月末払いだけど。」

「わかりました。月末にはちゃんとお給料、でますよね?」

「………またその話ですか。わかってますよ、ちゃんと払いますよ。」


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