乙女は白馬に乗った王子を待っている
その時、電話がかかって来た。
ゆり子が素早く取ると、登録希望者の問い合わせだった。来社の予定を話して電話を切ると、またすぐに別の電話がかかってくる。
結局、その日はずっと電話に出っぱなしで、ゆり子は問い合わせ以外の業務がほとんどできなかった。
「何か……、今日、問い合わせが多かったですねぇ。」
「タウン誌に広告出したんだよ。」
「なるほどー、タウン誌ねぇ。いいじゃないですか。」
「この分だと、来週の登録希望者は2、30人になるんじゃないか。頑張れよ。」
2、30人? 責任重大じゃないか??
「……社長、いいんでしょうか、私なんかが研修とかそういうことやってて。」
「お、弱気だなあ。」
「だって……。」
「大丈夫だよ。特に権藤は、派遣の経験が長いから、どんな心構えでいたらいいか、とかその辺のフォローもできるだろうし。
特に、初めて、派遣する人たちが自信をもって仕事場に行けるようにして欲しいんだから、権藤が適任だろう?」
思いがけない温かい言葉に、海水が砂浜に染み込んで行くように、静かな闘志が体に満たされて行くような気がした。
社長の期待に応えたい。