乙女は白馬に乗った王子を待っている
良くも悪くもさやかは、毎日高橋の一つ一つに翻弄されているようだったが、
そちらの方面に関しては、ゆり子は何の起伏もない、平凡とも穏やかともいえる毎日を送っていた。
時おり、東城からなんやかんやと遊びの誘いが来ていたし、3回に一回ぐらいは付き合っていたのだが、それでも、東城との関係は、単なる遊び友だち以上になることもなかった。
「オレがどんだけ、君につぎ込んでるか分かってる、ゆりちゃん。」
今では、すっかり気心の知れた友だちとなっている東城は、飲みに行くとそんな風にゆり子に絡んでくる。
ゆり子の方も心得たもので、笑いながら軽口を返した。
「だから、最高の友だちだって最初から言ってるじゃない。はい、二人の友情に乾杯。」
ゆり子はグラスをカチンと鳴らした。
「友情か、便利な言葉だね。いつか胸を掻きむしられるような激情に変わる事はないの?」
「ない」
即答すると、東城は残念そうに笑った。
「返事が早すぎる! 礼儀として10秒ぐらい考えろよ。」
こんな風に答えてくれるから、東城と楽しく過ごせるのだろうとゆり子は常々思っていた。
やっぱり東城との友情に感謝である。