乙女は白馬に乗った王子を待っている
高橋から、一度、山村月星(るな)の様子を見に行ってこい、と言われていたので、その週に入ってようやく月星を訊ねた。
タウン誌に広告を出してからというもの、さらに雑多な業務が発生しており、ゆり子はなんのかんのと会社の業務に追われていて、なかなか時間が作れなかったのだ。
最も、それは、少しずつ派遣の登録者の数が増えていたからであり、派遣先も増えて来ているからであり、「嬉しい悲鳴」といったところで、とうてい文句は言えなかった。
ゆり子が様子を見に行った時、月星は、ソツなく受け付け業務をこなしており、一人前の受付嬢としてしっかり働いていた。
陰からしばらく見ていたら、セクハラまがいのオヤジがやって来たのだが、月星は、ケンカをすることも険悪な雰囲気になることもなく上手にあしらっており、ゆり子はほっと胸をなでおろしたものだった。
「山村さん、順調にやっているみたいね。時間があるなら、お昼でも一緒にどう?」
そろそろお昼になろうかというころ、ゆり子は月星に声をかけた。
お昼休みだけは、代わりの女子社員が受け付けに入ってくれる、というので、彼女が来るのを待って、ゆり子と月星はちかくのファミレスに食事に出た。