乙女は白馬に乗った王子を待っている
タウン誌の効果が効いたのか、急に火がついたように、ここのところ派遣の登録者が殺到していた。
だから、ゆり子はそれから、毎日の業務をこなすのに精一杯で、会社がどうなるとか、自分は何がしたいのか、なんて悠長なことを考えるヒマもなく毎日が過ぎていた。
目の前にあるやらなければならないことを片付けるのに必死である。
毎日残業で遅くなるゆり子を見てさやかがぼやく。
「高橋さん、忙しいみたいで、最近全然連絡くれないの。
電話してもすぐに切っちゃうし。ねえ、どうしたらいい?」
ゆり子は毎日の仕事がやってもやっても積み上がって行く状態でイライラしているから、あまりにものん気なさやかの言い草に腹が立ってくるのだった。
「ね、社長も私も、今、軌道に乗せるのでいっぱいいっぱいだから、
会えない、とか、デートして、とかそんな文句言わないでくれる?」
「だけど……、アタシのことを大事にしてくれてるんなら、何とかして時間を作ってくれるんじゃない?
この前のデートだって何か、片手間だったしさぁ。」
相変わらず、さやかは夢見るようなことを言っているが、間近で見ているゆり子には、高橋が本当に忙しそうにしていることが分かっているだけに、さやかのこの文句は伝えにくかった。