乙女は白馬に乗った王子を待っている
急に、そんなことを指摘されて、ゆり子もなんだか照れくさくなってきた。
確かに、高橋は調子のいい男だし、いつもヘラヘラしていて、ゆり子はこんな男の会社がいつまでもつのかと不安でもあった。
さやかのことだって、どうせ、面白半分で手を出してみただけだろう、と高を括っていたところがある。
だから、さやかと真面目に付き合っているのが意外でもあったし、仕事に情熱を傾けているのを目の当たりにして、自分も力になりたいと思った事も確かだ。
「だって……、遊んでるわけじゃないんだから、さやかだって、我がままばかり言ってないで、もう少し社長の身になってあげるべきだと思っただけですよ。」
「だけどさー、さやかちゃんの文句って結構筋が通ってると思わない?」
「へ!?」
今度は高橋がさやかをかばうようなことを言い出したので、ゆり子は思わずむせてしまった。
「だってさ、所詮は『たかが仕事』なわけだよ。別にこの会社が潰れたところで、困る人なんて早々いないだろうし、
それで、さやかちゃんをないがしろにする、っていうのも、なんか虚しいっていうかさ……。」
「いやいや、社長! 取りあえず、この会社が潰れたら、アタシが路頭に迷います!」
ゆり子はそこだけは力説した。
「もしも、会社が潰れるとなったら、権藤の就職先だけは、全力を尽くして探すから心配するな。」
高橋はそう言うと、ゆり子の頭をくしゃくしゃとなでた。