乙女は白馬に乗った王子を待っている
「どうして。」
「だって、結婚して子どもを産んで……。」
「結婚して子どもを産んでも仕事すればいいじゃない。」
「何でそんなに仕事をさせたいんですか。」
「………そんなにしたくないの、仕事?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、私は、結婚もしたいし、子どもも産みたいし、普通に幸せに暮らしたいだけですよ。」
高橋の無邪気な言い方に思わず本音が出ていた。
30も過ぎて、「結婚もしたいし、子どもも産みたい」なんて切実に思ってると知られるのは、カレシもいない身としては非常に切ない。
だから、いつも「結婚してもいい」「でも必死で探してるわけじゃない」「そんな無理するぐらいなら一人でかまわない」オーラをまとって、ゆり子は自分を守ってきたのであった。
だけど、今、なぜか高橋に素直な心の内を吐き出せた。
「……成る程ねぇ。そうだよねぇ。やっぱり結婚して幸せになりたいよねぇ。何で結婚できないのかなぁ。」
いや、それは大きなお世話だろッ!
って叫ぼうとした時。
「女子にとっては、やっぱり結婚するって難しいってことなんだろうかね?」
高橋が独り言を呟くように聞いてきた。