乙女は白馬に乗った王子を待っている
「難しいに決まってるじゃないですか。一生の伴侶を決めるわけですから。
 適当に決めて嫌だからやーめた、っていうわけにいかないじゃないですか?」

「結局は、権藤も待ってるわけだ。とびっきりの白馬の王子様を。」

急に出て来たメルヘンチックな言葉に戸惑った。
面白そうに高橋は続ける。

「だって、素敵な人が結婚して現状から救い出してくれるのを待っているわけでしょう。
 だから、一生働こうなんて思いつかない。」

高橋の言葉は痛烈な皮肉のように感じられた。が、そういうわけでもなさそうで、

「そもそも、いい仕事が少な過ぎるのが問題なんだよなー、女子の場合。」

とぶつぶつと呟く。

「社長は何をそんなに気にしてるんですか。」

「……だって、オレがこの会社を作ったのがそもそもそういうことが気になってたからなんだもん。」

わけがわからない、というような顔をしたゆり子に向かって、高橋は言葉を重ねた。
 
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