乙女は白馬に乗った王子を待っている
「だってさ、女子って、大変じゃない?
男みたいに収入の高い仕事にはなかなかつけないし、だから、結婚しないとゆとりある生活はなかなか望めないし、年を取ってくると、とたんに結婚が厳しくなるしさ。
ま、最近は男もうかうかしてると中年フリーターとかになっちゃうけどね。
とにかく、だからオレはね、そういう女子でも明るくたくましく生きていけるお手伝いをしたいのさ。」
「………だから、人材派遣の会社なんて興したんですか?」
「まあね。だってさー、男並みに給料のいい安定した仕事につけたら、
人生がもっと楽に生きられるようになるわけだろ、女だって。別にそこまで結婚にこだわる必要もなくなるだろうし。」
「いやあ、まあ、そうですけどね、それで派遣の会社……って、なんかスゴいですね、社長。」
「いやあ、そんなに褒めなくても。」
「別に褒めてませんけど。」
「だからさ、とにかく派遣にくるコたちが、少しでもやりがいのある仕事について、
出来れば最終的には正社員という形で働けるようにしてあげたい、というのがオレの野心なわけ。
それで、もしも、バリバリキャリアを積んでしっかり収入を得る事が出来たりしたらサイコーだね。」
知らなかった……。
何でもソツなくクールに振る舞っているだけとばかり思っていた高橋にこんな情熱が隠されていたとは。
「だからね、面接とか研修とかで、どんなことがしたいか、何ができるのか、拾い上げて、
いい形で仕事が出来るようになればいいな、と常々思ってるのさ。
まあ、いつか実現できるかもしれない、っていう程度のはかない理想ってのはわかってるんだけどさ。」
そう言って、ビールを飲み干した高橋は、なんだかとてつもなくカッコ良かった。