乙女は白馬に乗った王子を待っている

二人でビールを飲んでしまえば、あっさりと解散となった。

疲れてるせいか、ほんのコップ1、2杯しか飲んでないのに、何となくふわふわした、おぼつかない足取りだった。

ゆらゆらとした気分で、さっきの高橋との会話を思い出していた。
なんだか、高橋の意外な言葉に、ゴーンとショックを受けるゆり子である。

そりゃあ、ゆり子だってグダグダ言いながらも今まで何とか仕事はしてきましたよ。
でも、やりたい仕事を見つけて、一生続けるとか考えたこともなかった。

どこかの(願わくば福利厚生の整った大手の)正社員事務職やってこい!みたいなキモチだったし、何となく、結婚した後は、状況が許せばそれなりに仕事を続けて……、派遣が難しかったら、パートで働いて……、そうしたら、子どもが出来ても何とかなるかもしれないし……、

第一、結婚相手が転勤したりしたら、自分は仕事を続けるなんてできなくなるだろうし……、ぐらいな、あいまいな青写真しか描いていなかった。

そもそも、仕事なんて生きるためにするもので、やりがいをもってするなんて、ほんの一握りの恵まれた人だと思っていた。
就職戦線で大爆死をした自分には、やりがいとか希望とか口にするのもためらわれた。

だから、
自分の希望とか夢とか、この青写真には入っていない。

多分、だから、先々が不安になるのだし、結婚を焦ったりもするのだ。

こんな風に、ゆり子は自分のことばかり考えて、頭がぐるぐるしているけど、結局肝心なことになると、なにがしたいのか、簡単に答えは出せそうもなかった。

最も、急に忙しくなった仕事をこなすのに精一杯で余計なことに気を遣うヒマがなかった、ということもある。


< 138 / 212 >

この作品をシェア

pagetop