乙女は白馬に乗った王子を待っている
その日は3人の派遣希望者が来た。
そのうちの一人、24歳になる山根はるかは、とある飲食店に勤めていたものの、仕事があまりにもハードすぎて、身体を壊して辞めざるを得なかったということだった。
「だから、どうしても事務職の正社員、と思って片っ端らから受けてるんですけど、全然引っかからなくて。
これ以上、無職の期間が長引くと就職がますます難しくなるので、とにかく派遣でも何でも仕事につかなきゃ、と思って。」
わかる! わかる!!
ゆり子ははるかの話を聞きながら激しく首を縦にふる。
「就職するの、大変だったでしょう。だんだん、正社員なら、ってなって、飲食店とかになっちゃうの。」
「そうなんですよ。でも、飲食店ってホントツラくって。」
「うんうん、わかる、わかる! 土日は休めないし、夜も遅かったりするしさあ。
大体肉体労働だから、終わって帰るころになってると、すっごく疲れるんだよね〜。」
「わかります!?アタシだって、入社したころはこれでも、がんばるぞ〜って思ってたんですよ。
でも、一ヶ月で何にも考えられないぐらいくたびれ果てました。たったの一ヶ月ですよ!
でも、そこでやめるなんて、悔しくて、歯を食いしばって働いてたら、とうとう倒れちゃいました。」
そうなのである。
はるかのような、やる気ある社員だって、会社に都合良く馬車馬のように働かされて、あげく使い捨てされる、なんてことはホントによく聞く話だ。