乙女は白馬に乗った王子を待っている
いそいそとした気分で夜道を歩く。
「どうしたの?鼻歌なんか歌って。」
後ろからポンと肩を叩いたのは翔太であった。
「うわっ! び、びっくりした〜。」
考えていた人が急に目の前に現れたから、ゆり子はひどく驚いた。
「そう?」
翔太は言いながらさりげなく、スーパーの袋をゆり子から受け取った。
「重っ〜。買い込んでんなぁ。」
「あ、うん。金曜日だからドラマ見ながら一杯やろうと思ってさ。来るでしょ?」
「……あ、うん、……さやかちゃんもいるよね?」
ゆり子は返事に迷った。息を整える。
「……多分、いないと思う。今日、社長とデートだから。」
「……そっか。」
「……やっぱ来ない?」
ちらりと翔太を見上げた。
すがるような顔になってなきゃいいんだけど。
「え? いや……、いくよ。うん、行く。」
「良かった!翔太の好きなソーセージも買ってるよ。」
「おー、じゃ、行かなきゃ。」
さっきの返事より声が明るくなったことに安心する。
「うん、待ってるよ。」
ゆり子はほっと胸をなで下ろした。