乙女は白馬に乗った王子を待っている
「本当に美味しそうに飲むよな〜、ゆり子さんて。」
「だって……、美味しいんだもん。」
「楽しそうだし、前向きだし、いいよなぁ、ゆり子さん。」
「ふふ。アタシと付き合おうかな、って気になってきた?」
ゆり子は、陽気な雰囲気に、つい、余計な軽口をたたいてしまった。
翔太が無言になる。怖い顔だった。
「……やだ、冗談だよ〜、そんな、マジな顔しないでよ。」
慌ててフォローしたけど、フォローになってないみたいだった。
「………」
「もー、気にしないでよー。翔太の気持ちはわかってるから〜」
ゆり子は、ことさらに明るく軽く言ったつもりだったのだけれど、翔太は俯き加減でやっぱり真剣な表情を崩さない。
気まずい雰囲気が漂う。それから、翔太はぱっと顔を上げてゆり子を見た。
「……っていうか、それもアリ?」
「え?」
ゆり子は目をしばたたかせた。
「だから、付き合ってみる?」
「……何、言ってんの?」
今度は二人とも無言になった。
ビールを飲む音だけが、不気味に部屋に広がる。ゆり子はいたたまれないったらありゃしなかった。
そのうちに、ドラマが始まった。