乙女は白馬に乗った王子を待っている
翔太とゆり子が思いがけず甘い夜を過ごしていたその頃。
さやかは、高橋の家で少し悲しい思いをしていた。
デートも思ったほどロマンチックじゃなかった上、さやかがちょっとドラマに夢中になっていた間に、高橋は眠りこけてしまっていたのだ。グーグーといびきまでかきながら。
久しぶりに会ったというのに、おなざりのデートしてかしてくれず、家に連れ込んだと思ったら、高橋は高いびきをかいてぐーすか寝てしまっている。
あまつさえよだれを垂らしているのだ。
さやかもこれにはガッカリだった。
久しぶりのデートで、ウキウキしていた自分がバカみたいだったと悲しくなる。
ドラマが終わっても、高橋はぐっすり眠ってしまって起き出す気配もない。
さやかは、少し迷ったが自分の家に帰ることにした。
今、急いで出て行けば終電に何とか間に合いそうだ。
さやかは、電車を降りるとあたりをキョロキョロしながら家までの道を急いだ。
夜道を一人で歩いていると、よく翔太がどこからともなく現れるのだ。
特に、商店街の道を曲がるところとか、コンビニの近くとかで遭遇することが多かった。
夜が更けてから一人で歩くのはやっぱりやっぱり心細い。
どういうわけか、そういう時に、翔太はいつもタイミングよく現れてくれたから、今もひょっとして会えるのではないかと期待していたのだった。
しかし、翔太に会う事もなく、すぐに自分の部屋にたどり着いた。
翔太の部屋もさやかたちの部屋も暗くなっているところを見ると、もうみんな寝てしまったのだろう。
静かにドアを開けて、さやかは、ゆり子が起きないようにそっと自分のベッドにもぐりこんだ。